第十四代上林春松(以下、先代):
上林春松家の歴史を振り返ってみると、われわれにとってもっとも大きな功績を残したのは、江戸時代から明治時代へと変わる激動の時に当主を務めた第十一代上林春松だったのではないでしょうか。幕府や大名からの庇護がなくなり苦境に立たされながらも、新たに問屋業に着手し、茶師から茶商へ転身を図り、お茶を一般の庶民に販売する道を選んでいます。ほかの多くの宇治の茶師たちは、それまでは幕府や大名相手に取引を行っていたため、一般の消費者を相手に商いをするということはプライドが許さなかったようですが、第十一代上林春松は果敢に実行しました。第十一代上林春松は、22歳の時にはもう当主になっておりましたので、おそらく若かったからこそ、茶師から茶商へとうまく転身ができたのではないかと思います。