綾鷹 茶葉のあまみ

永禄年間に創業された四五〇年の歴史を持つ、
宇治の老舗茶舗です。

上林春松本店の歴史

時の将軍の庇護を受けた御茶師 上林春松家

十三世紀初頭、栂尾高山寺の僧 明恵高弁によって、宇治に茶園を開いたことが、宇治茶の始まりと言われています。室町時代、足利三代将軍義満公は、「宇治七名園」と呼ばれる茶園を宇治の地に作り、その庇護のもと、宇治茶は発展していきました。

宇治茶の名声が流布した十四世紀後半頃、上林家は、有力茶師「御茶師」として栄え、茶の湯の文化が大成した戦国時代以降も豊臣家や徳川家などからも重用されました。江戸時代には御茶師の中の最高位「御物茶師(ごもつちゃし)」を与えられ、宇治代官、茶頭取として宇治茶の総支配を任じられました。

お茶壷道中之図

左:豊臣秀吉肖像画(写真協力:高台寺蔵)
右:徳川家康肖像画(写真協力:大阪城天守閣蔵 )

伝統と革新で時代を切り開く

幕府が消滅した明治維新以降、廃業の危機を迎える茶師が多かった中、上林春松本店は、それまで将軍や大名など一部の層の楽しみとして培われてきた「抹茶」による茶の湯文化にとらわれず、当時新開発であった「玉露」を扱い、将軍家や大名に代わる新しいお茶の愛飲者を得て、廃業/在続の危機をのりこえてきました。現在、「上林春松本店」は宇治御茶師の末裔として、十五代上林春松のもと、これまで培われてきた経験と伝統の精神を今に受け継ぐと同時に、革新的な手法を積極的に取り入れ、宇治茶、そして日本の茶文化の発展に寄与しています。

お茶づくりへの想い

お茶へのこだわり

足利将軍の時代より続く上林春松の歴史は現在で約450年。そして、今後も続いて行くはずだと思います。私は、その長い歴史のほんのひと時をお預かりしているにすぎません。だからこそ「多くの人に本物の味を楽しんでもらいたい」というシンプルな想いを大切にしなければならないと思うんです。

ですから、皆さんが期待しているような職人気質な"こだわり"はあまりありません。あるとしたら、自分のこだわりより、お客様に美味しいと感じてもらう事が優先ということでしょうか。

美味しいお茶を作るには

私の主な仕事は、全国から集められる何百と言う茶の品質をひとつひとつ見定め、それらを組み合わせて、それらの特徴を生かしながら銘柄を作る事です。ここで、特に重要になってくるのが「外観」と「香り」。

環境や体調によって変わってしまう味は実はその次なんです。言い換えると、外観と香りで味は大体予想がついてしまうんです。同じくお客様の"美味しい"という反応も、味だけではなく感じるものから出てきます。

上林春松と言う名前にあぐらをかいていたら見抜かれてしまいます。だからこそ、全ての感覚を総動員させて、とにかく本当に美味しいと感じてもらえる本物の茶を見極め、仕上げていくことが大切なんです。

第十五代上林春松にとってお茶とは

私の場合は生まれたときからお茶があるのが当たり前でした。遊び場もお茶のある作業場でしたし、多分子供にしては沢山のお茶を飲んでいたと思います。でもそれが普通だったんです。特別美味しいお茶を飲んでいるんだという意識もないですし、特殊な家に生まれたという意識もなかった。生まれてその生活しかしてませんから。そんな環境の中、私は幼い頃からお茶に囲まれ、ごくごく自然にお茶の仕事に携わるようになったのです。だから私にとってのお茶とは、"本当にあって当たり前のもの"。空気と同じような存在なのです。

上林春松本店の社是「温故知新」

綾鷹誕生への道のり

上林春松本店と綾鷹との出会い

上林春松家は、古くは将軍家に重用され、幕末には「玉露」を一般の方々に販売し、先代では、当時としては新しい販路である百貨店にて商品を販売してきました。上林春松家には脈々と、時代の流れを掴む"気質"があるんだと思います。変わらないのは、"多くの人に本物の味を楽しんでもらいたい"という想いだけ。そして私が代表となった翌年、コカ・コーラ社より、新しい緑茶(後の"綾鷹")開発のお話を頂いたのです。正直、抵抗がなかった、と言えば嘘になります。しかし、コカ・コーラ社の「本物のお茶を多くの人に飲んで欲しい」と言う熱意を感じた時、思いました。"時代の流れを掴む上林春松家の気質。このお話は偶然ではなく、必然なのかもしれない"と。そうして、綾鷹の開発をお手伝いさせて頂く事になったのです。

綾鷹への想い

数々の試行錯誤と歳月をかけて作った「綾鷹」が完成した時、それはもう感動しました。と同時に「脅威」にも感じました。綾鷹の誕生によって、多くの人が本物の味をペットボトルとして気軽に楽しめるようになるとは、と。とはいえ、少しでも多くの人に本物の味を味わっていただける事が私たちの何よりもの喜び。この本物の味を是非多くの人に感じて頂き、もっとお茶に興味をもってもらえたらこんなに嬉しい事はありません。